ゴールデンラジオ メインディッシュ 2023年4月19日 「宮台真司」

アナウンサー氏
では今日のお客さまをご紹介しましょう、東京都立大学の教授を務められています、社会学者の宮台真司さんです。
よろしくお願い致します。

大竹まこと氏
よろしくお願いします。
この間、安倍さんから始まって宮台さんも襲われて、それから先日は岸田総理も爆発物のようなものが投げ入れられたと・・・、なんかこうバックがあまり見えてこない感じもするんで、テロですか?こういう行為が何でこういうふうに起こってきてるのかっていうのは何か意味合いっていうようなことはあるんですか?

宮台真司氏
90年代の半ばぐらいから日本だけではなくて、アメリカを中心として先進国で無差別殺傷事件がたくさん起こるようになっているんですよね。で、これは数が爆上がりで、ホント指数関数的に上昇しているんですね。で、安倍さんや岸田さんを狙ったのは無差別とは違う、例えば山上、安倍さんのケースは恨みが背景にあるとかっていうことはあるとはいえ、何か僕たちは似た匂いを感じる。で、それは何かっていうと、「人間関係」、「孤独」の問題なんですよね。人間関係があれば止めてもらえただろうなとか、別の解決策を示してもらえただろうなっていうふに感じるような何か・・・ということですよね。
90年代末にね、漫画家のねこぢるさんが自殺されたとき、その直前に描いた『ぢるぢる旅行記ネパール編』、「生きていても死んでいても変わらない感じ」みたいなね、そういうセリフを書いておられたんだけど、実は当時、・・・覚えておられるかな?練炭自殺っていうのがネットで集まって、車で移動しながら練炭自殺をする、で、これを僕が実際調べて面白いと思ったことがあります。集まって練炭自殺するっていう話は、しかしね5件に1回は実現しないんです。みんなで移動して決行場所を探しているうちにお腹すいたりして、じゃあラーメン食べようかって言って、血糖値が上がって気分が良くなって・・・とかね、あるいは海へ散歩しようかみたいにして、そうすると何か気分が変わっちゃって、何か自殺する感じじゃなくなったねって言って終わる。当時はすでにそこに集まる人たちはそのことを知ってて集まるんですね。
これって面白いですよね。確実な自殺の実行を思念していない、自殺念慮はさして強くない。つまり自殺して死んだら死んだでいいし、生きたら生きたでいいや・・・みたな感じ。
これは過去四半世紀、無差別殺傷事件を含めて、捕まったら捕まったでいいや別に、つまり僕はTBSラジオでそれを「杜撰な犯罪の増加」・・・、これはバカになったということよりも、捕まらないことを強く念じない、なぜならば捕まろうが捕まらまいが、刑務所の中だろうが外だろうが、まあ大差ないやっていう感覚が広がっているということですよね。
で、なんでそういうふうになるのか?これは僕が高校時代に影響を受けたマルティン・ブーバーっていう人が、1922年に書いた『我と汝』という本があるんです。で、我はIで、汝はYOUなんですけれども、この本の主題を一言で言えば、「我」と「それ」の関係と「我」と「あなた」の関係とはまったく違うということなんですね。で、「あなた」汝ですけど、相手を「あなた」としてまなざし、その相手も自分を「あなた」というふうにしてまなざしてくれる関係では、まなざされることによって輪郭と重みができるっていう、そういう発想をするんですね。まなざされないとぼんやりしている。でも「あなた」としてまなざされると、自分が何者で、何をするべき人間なのかということがわかる。でも「それ」としてまなざされると、それが起こらないんですね。「それ」としてまなざされるとはどういうことかというと、お仕事の世界なんですよね。行政官僚制もそうだけど、一定のスペックがあってマニュアル通りというかですね、手順通りこなせれば誰でもいいわけですよね。社長だってそうです。組織、オーガニゼーションていうのはそういうふうに作られていて、誰かが死んだら終わるようにはなっていなくて、誰も彼も入れ替え可能。だから僕たちがシチューを作るときに、ニンジン、タマゴ、ジャガイモ、タマネギ・・・、名前はつかない具材でも、ちゃんとしておいしければいいだけの話。お仕事の界隈ではそういうふうに接しますよね。でもまずかったらポイっと捨てる。お仕事の世界でもそうですよね。
これがつまり「それ」としての扱いです。一般には「それ」として扱われるようなお仕事の界隈、それがバトルフィールド、戦場だとすると、そこで疲れたらリターン、帰ってきてそこでまたリセットしてリエントリーするという「オームベース」っていうのがあって、「ホームベース」はYOUの世界、汝の世界だよねってことだけど、若い世代になればなるほど国に関係なくそういう自分がYOUとしてある種ユニークな存在として扱われるようなホームベースが、もうない。どこに行っても「それ」として扱われる。
で、「それ」として扱われるときに「お前はまずい具材からポイ」みたいなヤツは勿論尊厳がないし、尊重されて扱われているように思えたって、ただ病気をしてけがをして動けなくなるとポイとかなるでしょ?
つまりこれが、ホームベースがないとまずいよと僕が25年間ずーっと言ってきたことですよね。やっと多くの人がその本質的な恐ろしさを身に染みて感じるようになったんじゃないかなあ。犯罪としての現れは違う。恨み的なテロもあれば、無差別殺傷事件もあれば、闇バイトもあれば、色んなのがあるんですよ。でもその種差の違いにみな目を奪われて、本質の共通性が分かっていないのがちょっと残念だと思いますね。

大竹氏
犯罪を犯した人たちもYOUという私とあなたっていう関係がなくなって、カレーライスの具みたいに、IT、それ・・・「それ」です、あなたは・・・と言われると使い捨て自由だし、居場所もないし・・・、それを自分で慰める場所も温める場所も手に入れてない、それが若者社会でとても多くなった・・・。

宮台氏
そうです。あのね、昔の奴隷主のような存在による粗雑な扱いとか、資本家による阻害とかというふうに考えると、実は間違いなのでね、念を押しておきます。そういうことじゃあないんです。問題はReplaceability、置き換え可能性ってことなんですよね。お前は誰にでも置き換えられる。あなたもだれにでも置き換えられる・・・。
例えば恋愛関係で、どうして私のことを好きなのって女が聞いて、かわいいからって男が答えて、敏感な女だったら、だったらかわいければ誰でもいいんだなってReplaceableになりますよね。
この置き換え可能性ってね、必ず人間をそれに気が付いた瞬間にすごく孤独にするんです、さびしく感じさせるんですね。そうすると孤独はねえ、心にも体にもすごく悪い影響を与えますよね、免疫力が下がって病気になりやすくなるし、うつになりやすくなって非常に活動しにくくなってしましますよね。だから、Replaceability、これがない社会なんてのはありえない。ビジネスの世界、バトルフィールドだから、それとして扱われるのは当たり前のことですね。ただ、そこで戦って疲れて、帰ったら労ってくれるホーム、ホームベースがあるかどうかということですね。

大竹氏
それは友達であったり、最愛の人であったり、くだらないことをいう仲間であったり・・・。

宮台氏
そうですね。だから例えばね、闇バイトの問題がありますよね。これは広域詐欺につながっていたんだけど、最近歩留まりが悪いっていうんでね、要は上の方の意向で広域強盗にどんどん変わりつつあるんですですよね。で、フィリピンとか外国で所謂指示役っていうのが捕まっているけど、捜査一課の親しい方もおっしゃっているように、これはただの真ん中ですよね。真ん中に指示役、その下にリクルーターがいて、その下に受け子っていう実行犯がいる。これ全部、Replaceableなんですよ。例えばね、強盗って90%以上捕まるんですよ。いくら捕まっても構わないわけ。誰が構わないんだろう、真ん中よりもまだ上がいるんです。それは捜査一課、その他の情報源、色んな情報源がありますが、まあ「組」ですよ。これは暴対法1992年以降、そして2005年暴排条例・・・、まあ暴対法でやくざ、組がビジネス化した、次に暴排条例って役務提供の対価としての支払いが禁じられた、つまりビジネスも禁じられたということで、一般人を使ってしのぎをあげるようになってきた。その一般人は皆さんご記憶のように「半グレ」だったんですよね。でもいまは、その辺の普通の、というよりもむしろ偏差値の高い大学の学生でも、かけ子とか受け子とかをやってるっていうね、そういう状態になったでしょ。
で、これいま申し上げたような、暴対法から暴排条例になった結果、生きていくためにはそれしかないよねって一般人を使うかたち、それをITがすごく支援してくれているんですよね。テレグラム、またはシグナルとかね、トアとか、色んなものを使えば絶対トレースできない、お金も仮想通貨を使えばトレースできない・・・、なので、実は真ん中よりも上がいるんだよねえ、っていうことが分かっていても手を出せない・・・、はい、この問題も大きい、でもこの問題が大きいんだけれどもしかし、なんで受け子かけ子する人たちが普通の人なの?
あのね、この闇バイトの報酬って、SNSとか一定の掲示板を使うんだけれど、すごい部分的なんですよね。この番号のコインロッカーから、何とかカードを受け取ってそれで金を引き出して、今度はここに行って渡すみたいなね。全体像は見えない。全体像は見えないので、ハードルは低い。だから普通の人が参加しやすい。それで日払い5万円とか・・・。で、そこが強調されがちなんだけど、ちょっと間違ってるなって僕は思いますね。
だって、部分的だって、もうこれだけインターネットで情報が出ている中でね、それがヤバい大きな全体の一部だってことはわかっていますよね。なので、全体が分からないということこそ言い訳に使っているだけなんでね。しかしその姑息な生き方は、もし親しい友達がいれば止めとけよって言われるよね、そんなに困ってるんなら助けてあげるよってね。そういうコミュニケーションがないんだよね。だからいつも閉ざされの中で、まあ部分的なもんだしっていうふうになる。でもその背景にはやっぱり考え抜かれていない感じ、例えば所詮そういうのは捕まるわけよ下っ端つうのは、監視カメラがいっぱあるからね。そういうことを含めて別に捕まっても捕まんなくてもいいやみたいな、ある種のダルさ、ダルい感覚っているのはスゴイ感じられるんですよね。

女性アナウンサー
罰則を、例えば受け子かけ子、罰則が厳しくないから舐めてかかってんのかなあと思うんですけど。もっと罰則厳しくしたらって素人感覚で思うんですけど・・・。

宮台氏
うん、でもそれは素人考えですね。
あのね、例えば広域強盗とか、まったく一般の人間たちが携帯とかヘッドギアで指令を受けて、あれやれこれやれって言われてやってるだけでしょ。でね、さっき申し上げたITとYOU問題。YOUとして名指されたことのない人間には自己価値、つまり尊厳がないんだよね。で、尊厳がない人間たちは捕まっても構わないんだよねえ。捕まっても構わない人間は重罰化したら、犯罪やらなくなりますか?っていう問題がある。一定の効果は勿論あるんだけれども、例えばね、ほぼ世界的にわかっているのは、無差別殺傷事件を自殺の代わりに行う人間たちがいるんだよね。自殺するのが怖い、無差別殺傷事件で捕まって死刑になる方が楽かな、みたいな。日本は死刑が存知されているので、こういう動機を持ちやすいですよね。そうすると重罰化、例えば極刑である死刑をもっと・・・というふうになると、一見犯罪抑止できそうにみえますけど、そうはならない可能性がありますよね。何事も根本原因が重要で、なぜ死んでも大差ないなあとか、シャバでもムショでも大差ないなあとか思っちまうのか、そこを手当てしないとどうしようもない・・・。そこを手当てするために必要なのは、ITではなくてYOUとして扱う、それとしてではなくて汝として扱われる界隈を回復するしかないというこということですね。
で、これって政治の問題とかでは実はなくて、皆さんの生き方の問題なんですよね。政治って行政官僚制なんで、せいぜいできるのは「それ」の乖歪、まあ学校も「それ」の乖歪なんですよね。ITの乖歪なんですけれども、そのあり方を少し良くするぐらいのことで、実際のホームベースにあたるものっていうのは、お上が何とかしてくれるみたなね、僕らヒラメきょろめでですね上を窺がってもどうにもならない世界なんですよね。そのことをどれだけ自覚するかだと思いますね。

大竹氏
捕まっても捕まらなくてもどっちでもいいやと、刑務所に入っていようと刑務所の外も中も変わんねえじゃねえかと・・・。

宮台氏
だから刑務所をホテルだって人もいるしね。

大竹氏
こういういまの若い人たち、あえて言えばおかれている立場っていうのは、日本がとても顕著なんですか?それとも・・・

宮台氏
日本が顕著ですね。
それは日本にはもともと規範がなくて、地域を守ろうってのはないんですよね。地域の姿がズタズタになっても、だれも頓着しないっていう、非常に不思議な国なんだけど、日本って家族が地域に依存しているっていうのはね、柳田国男が言ったように非常に大きな特徴で、したがって昔だったらね両親は働いている、子どもは放置されていると見えて、近所の違う年齢の集団で原っぱで遊んだりとか、爺ちゃん婆ちゃんに世代飛び越しで面倒を見てもらったりとか、だから子どもは村の子っていうふうに柳田は表現しましたよね。

大竹氏
村の子・・・。

宮台氏
だけど家族っていうのはそういうもんなんで、家族として守るべき規範があるってことは、ないんですね。なので、地域が空っぽになると家族も空っぽになる、だから日本は単純に家族も地域と同じように空っぽでスカスカな状態、したがって家族はホームベースではなくなった、多くの人にとってそういう状態になったってことですね。

大竹氏
それは都市部もそうでないところも同じような状態ですか?

宮台氏
うん、地域差がありますが、それは速度の問題なんですよね。だから方向性は変わらないから遅かれ早かれそうなる。それは日本とその他の国についても言えて、日本ほぼ規範のない国、国民だけれども、しかし規範があろうが、あんまり大差がなくなってきちゃった。それはね、規範がはたらく場がないわけですね。規範っていうのは、例えば対面のある場、Placeではたらくんですよね。だからそれは具体的な地理、例えば教会、Churchだったりもするだろうし、あるいはお仕事の生業の場だったりするわけだけれども、いま95年からねやっぱりインターネット化がものすごく広まって、人々の可処分時間の大半がネットとSNSで使われる、そうするとこれは統計的に明らかなんだけれども、親友って呼ばれる人の数っていうのはだいたい過去20年ちょっとぐらいで、3人から2人、まあこれちょっと古いデータなんでですね、おそらく2人から1人くらいに、まあ半分くらいになっちゃったんですね。これってスゴイ大変なことですね。だから僕が良く言ういまの若い人って友達がいないよ・・・、友達、ホントにいないんですよ。で、彼らが言う友達って、全部知り合いなんですよね。困ったときに助けてくれる、悩みを何でも話せる、こういう条件を満するのが友達、基本ね・・・、年長者にとっては。だからそういう友達ってさっきのITじゃなくて、やっぱりYOUとしてみてくれるってことでしょ。友達がいなくて知り合いしかいない、知り合いと友達の違いはITとYOUの違いですよ。大竹さんとか僕の世代はよく見ないとねえ、和気あいあいと戯れているように見えるから勘違いしやすいんだけど、ほとんど全部置き換え可能なんです。
所謂???関係も恋人関係ではないです。告ってyesっていうことで、告られてyesってことで付き合い始めて、チューニング的デートって言いますか、要するにキャラ&テンプレ、テンプレートなんですよね。つまんねえ、ホントに付き合いをしてて、愛情はめちゃくちゃ薄くて、じゃあ告られてyesってなに?単なる相互所有権の確認、契約なんですよ。他のヤツとデーグ(?)すんなよSEXすんなよ、で大して深い愛情もないくせに、相手が浮気をするとプライドだけ傷つけられたみたいにして吹き上がるっていうね、非常にあさましいみっともない関係が広がっていますね。

大竹氏
1つのカレーライスの具材みたいな扱いから、ITからYOUにこの日本の僕らも含めてですけど若い人達が変わっていけるような方法・・・?

宮台氏
日本がとか日本をとか言うとね、間違っちゃうんです。日本がどうあろうがですね、自分と仲間はこうしよう、或いはそうではない方向にハズれそうなら仲間を引き戻そう、というふうにね生きていくしかない。それが社会という荒野を仲間と生きようねっていう言い方でね、もうマクロには・・・、日本の外側もそうなんですよね、なので、国家政策としてそうじゃない方向に行きますとかって無理だし、国家政策としてやりますっていたってね、実際何もできません。少子化対策ですら一つも何もできないんだから。

大竹氏
でも、そうなってくると、ちょっと孤独を楽しむとかそういう滅茶苦茶贅沢というか・・・

宮台氏
お一人様云々でしょ?でもそれを言ってた当事者が実際には最愛の人がいてみたいなことになってる、お笑いでしたけど・・・。

大竹氏
言ってましたね、そんなこと。

宮台氏
少子化対策ってね、最後に言っておくと、所謂経済的支援が必要とか大学を卒業させるまでにかかるのは2,000万云々かんぬん、これは統計的には完全に枝葉で、どこの国でも最大の原因は未婚化なんです。晩婚化ではないです。もう結婚しない人が滅茶苦茶増えちゃったんですね。なので一部ヨーロッパの国では6割を超える子どもがねシングルマザーから出生する、それを政府が公的に支援する形になっている。それでも人口を保つために必要な出生率2.07に達している国はないんですね。
どんなに支援して、結婚はしなくてもいい、産み育ててくださればいくらでも支援は・・・、それだって女性は自由ですからね、どんどん子どもを育てなくなります。
さて、日本の場合には恋愛ができないから、過去20数年間で恋愛を、例えば高校生、大学生で性体験をしている人の割合は、もう半分以下に落ちているでしょ?さらに、これはすごく面白いですよ、絆に相当する関係とは僕らは良い関係と思うでしょう?東横界隈とかぴえん系界隈とか調べると面白くて、それがイヤな人が多いんだよね。それは踏み込まれるとキツい、だから自分も踏み込まないでおこうというふうに、安置性???しちゃうんだよね。これ、大変なことですよ。なんでかっていうと、自分に価値がないと思っている存在は踏み込まれることに脅えがある。

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宮台 真司 (著), 藤井 聡 (著)

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