伊勢奥津の古民家カフェ「葉流乃音(はるのん)」

伊勢奥津駅から徒歩7、8分の伊勢本街道沿いに古民家カフェ「葉流乃音」がある。

JR系の雑誌『ひととき』には次のように書かれている。

 美杉に移住する人たちも増えてきた。
 雲出川を超えた先の集落にある古民家カフェ「葉流乃音」は、大阪府から移住してきた夫妻が経営している。
「定年になったら古民家を改装して暮らそうと決めていました。ここは建物も周りの環境も一目で気に入ったんです」
 落ち往いた空間で味わう自家焙煎のコーヒーや手作りのケーキが人気を呼んで、全国から客がやってくる。二人ともここへ来るまで名松線のことは知らなかったと言う。
「でも復活の経緯を知って、愛着を持つようになりました。毎日変わらず鉄道が走っているだけで、何かほっとしますね」
 店には、伊勢奥津と家城の間を記した、お手製の時刻表が置かれる。
「この区間の景色、見ごたえあるじゃないですか。クルマで来た方にも観光列車として楽しんで頂きたいと思って」
そう語ると二人は、いいところですよ、ここは、と笑顔になった。

店内に入ると、突き当たりと左手側に建具があって、どちらに進んでよいのか、店員さんの声掛けがないと入りにくかった。
「左手からどうぞ」と導かれて中に入ると、座敷間に入った。

さらに襖を開けたところがメイン。

良いカフェは照明と調度品(特にイスとテーブル)、そして食器にオーナーの並々ならぬ「気」が入っているように思う。カフェは微に入り細に入り、非日常を演出する場なので、これは重要なポイントだ。
ここはそのどれも満たすものであった。
間接照明が放つ光の模様はとても満足がいくものであったし、中央に置かれた薪ストーブは何か安心感をもたらす演出であった。注文したケーキを乗せた食器もコーヒーカップも、少し控えめな地味なもので、周りの風景に溶け込んでいた。

ビックリしたのはイスだ。
様々なイスが置かれていたが、僕が座ったイスは、これまで座ったことのないものだった。
ロッキングチェアのような形状で、枕のような首あてが背もたれの上部にあって、自分の好みの場所に下げることが出来る。自分に合わせるととてもしっくりくる。
自分の首をそこからはなすと、裏側の重りがはたらいて、首あてが元の上部に戻るという仕掛けがなされている。

注文したのは、チーズケーキとエチオピアだったけのコーヒー。
スティックケーキと銘打った小ぶりのシナモンをかすかに含んでいるもので、とても食べやすくおいしかった。

ウォーターグラスがきれいで、照明の光がこれに当たれば微妙な光の屈折が期待できそうだと思い、室内数か所の照明に当ててみたが、うまく光らせることが出来なかったものの、存在感があった。
光が射す襖を開けると縁側があり、その向こうに中庭を眺められた。
敷地の端には立派な蔵があり、庭自体も狭くはない。
ここからだと多くの野鳥が観察できるかもしれないなと、うらやましくなった。

帰り際にカウンターをのぞいた。
ここに座って、コーヒーを頂くことはできるんですか?と尋ねると、「はい」とのこと。
ご夫婦ともに口数が多くはないようだが、これはそうしようと決めているのかもしれないなと感じた。
次回はこのカウンターで頂くことにしたい。


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